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アメリカニューヨークで生活しているときに同時多発テロが起きて経済が完全に破綻して、きれいに仕事もなくなり、友達も去っていき、自分の生活が完全にとまってしまいました。街が寒くて、寂しくて、自分の想い描いていた理想とあまりにも違い、これからどうしていこうかと気持ちが沈んでばかりいました。

でもたまたまそのとき住んでいたイーストビレッジという街がとても良かったんです。まわりの人たちもみんな止まっている。というより、もとからたいして動いていない。たいした生活は送っていないんだけど、だからこそまったく変わらずそのまんまで生きている。そんな人たちばかりがまわりにいました。

それは毎朝窓から外をのぞくと道を掃除しているおばさんだったり、なぜか冬なのにアスファルトを裸足で歩いているオッサンだったり、公園のジャンキーやトイレで倒れている黒人のホームレスだったり。しょうもないことでケンカをしたり、わずかな食べ物に一喜一憂するひとだったり。盗んだものを通りで売っているオッサンだったり。どんなに生活が止まろうと、そんな人たちの生活はどこか不変でどこか“安定”しているように見えました。不変の自分を生きている。なんだか仕事がなくて、寂しいくらいで、明日の生活が見えないくらいで悩んでいることがアホに思えてくる。思っていた以上に結構自由なんだなって、楽しくない生活のなかでどこか楽観的になったりしました。

そんなとき、たまたま重い鬱病のひととルームシェアで生活しなくてはならなくなって、これまた大変な修羅場のような生活で、それこそその人が隣で自殺してしまうかもしれないというような毎日でした。でも2ヶ月くらいその人と一緒にいたおかげで、当時「鬱病」と世間で騒がれはじめていたものの姿が、実際 「鬱病」と世間で呼ばれる人がどんな人なのかっていうのが少し見えたんです。まあ簡単に言うとすごくまっすぐで、頭もよくて、機転もきく、人のこころもわかる。みょうにいいやつ。でもなんかたぶん理由があってたまたま「鬱病」になってしまったんですね。ただそれだけです。

だから、その人も単なる普通の人で、僕とも変わらないと思ったんです。病気になったかならなかったかだけ。どっちが病気かだって怪しいものです。自分だって十分悩んでいるし、その人にも負けないかもね。まあそんなことがいろいろ起きているタイミングで、これもすごい偶然だけど、写真集 「The Happiness Within」に出てくるひとたちと出会ってしまいました。この人たちはそれこそもっとメチャメチャでした。

HIV、犯罪歴、ジャンキー、鬱病、障害、などなど、ありとあらゆる“負”を持っている。振る舞いも子どもみたいで、なにかあるとすぐケンカが始まってしまう。社会性もゼロにちかい。まあ普通の社会では落第者と呼ばれてしまうかもしれない。でも僕の気持ちはまた同じようなものを感じて、メチャメチャな生活のなかで彼らはなにかが徹底的に安定しているんです。ちょっとやそっとのことではひっくり返らないんですね。もうすでにひっくり返っているから。これ以上なにもひっくり返らない。毎日ちゃんと生きているんです。そうそう勝てないですよ、あのパワーには。当時の僕にはそういうものがすごく必要で、そういうカッコつけでない存在にすごく惹かれました。そして彼らのいる場所(ハウジングワークスというNPO)に通い続けて写真を撮ったんです。

その後2年くらいしてから日本に帰ってきて、やっぱり徹底的に足りない何かをいま感じます。それはどうでしょう、なんかひっくり返ってみるパワーとか、無計画な計画とか、ある種の無謀さとか、そういうものの可能性をあまりに認めなさすぎる。小手先のものにすがって、不確かなものを無くそうと分析や説明ばっかり。結局、確かなものなんて何にもないのに。計画をつくれば確かなものがあるかのように錯覚して、右往左往する。答えなんて見つかるわけないのにね。

自分もまあそうな感じになってしまうこともあるんだけど、でも本当は、もうすでに僕らは生きているだけで十分儲けもんなんだと思うね。ここにこれたというだけでね。そんなに心配することに時間使わないでいいはずなんです。いまの自分ですでに okだと思う。ネガティブなものもポジティブなものも全部ひっくるめて、それをokとしたいですね。

11月14日のイベント 「The Happinesse Within」は小さな会だけど、仲間の助けを借りて、いろいろな価値観やネガティブと思われるものを含めてok と思える時間をつくってみたいと思っています。さりげなくね。

長谷良樹
 

     

 
 
 

 
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